♪DOWNTOWN BOY
H君は、息子が3年続けて同じクラスになった男の子である。スポーツマンで元気がいいが、何につけユニークなわが子と気があって、ひよこのぬいぐるみのコレクションにつきあってくれている。よくうちにも遊びに来るけれど、帰宅時間をよく守るし挨拶が自分の言葉できちんとできるので、おうちの様子がうかがえて、母としても好感を持っていた。彼の家族は、近くの公団に住んでいる。
息子の通う小学校は、我が母校である。正確にいうと、私は小2の半ばまで通った。マンモス校で一学年8クラスもある学校だったので、分校ができて、私はそちらへ途中で移ったのである。だから、一年ちょっとしか通わなかったわけで、記憶は断片的にしかない。しかし、覚えているクラスメートが何人かいる。たとえばA君。彼は、入学式の後教室で初めて隣になった男の子だった。黒板の上に貼ってある五十音の表を、「あかさたなはまやらわいきし…」といきなり読み出したので、当時ひらがなを読むことも書くことも出来なかった私は面くらい、A君ってすごい!と憧れ交じりに思ったものだ。家に帰って、母に頼んで教えてもらい、数日後には「あかさたなはまやらわいきし…」を私もそらんじれるようになった。そのほかにM君は、少し離れた坂の途中に住んでいて元気のいい男の子だったが、なぜか私と誕生日が一緒だったので、とても不思議な気がしてこれまた顔までよく覚えている。女の子では、Mさん。焼き芋を買ってきて、家に呼んでくれたときに出してくれたことと、夏に蛍を見せに小川へ連れて行ってくれたことがあったな。その後みんながどうなったかは、学校がかわってしまったから全然わからない。新しい学校で一緒になった友達と、昔の学校の友達とでは、すっぱりと断ち切られた地域と時間のおかげで、すっかり縁が途絶えたままだった。
だけど、息子の学校には、両親のうちどちらかが地元出身という家庭がいくつかあるらしく、我が家を含めてときどき、昔の学校がどんなだったかおうちの人に聞いてきてください、なんていう宿題が出されると張り切る子が何人かいる。先に書いたH君もそのひとりであった。お父さんが昔この小学校に通っていたという。お母さんとは顔なじみなので、訊いてみたら、H君のお父さんはなんと私と同じ年だという。もしかしたら、同じクラス?でも8クラスもあったんだよ、いやまてよ、H君って名前、なんだか覚えがあるような……
そして昨日の運動会。家族が集まって応援している席で、またH君のお母さんに会ったら、やっぱりご夫君は私を覚えているという。同じクラスだったとか。そして終わり間近に、H君パパを連れて挨拶にこられた。これが、30数年ぶりの再会になった。H君は、A君やM君の仲間で、今でも付き合いがあるという。そういえば、名前だけだけど覚えていたのは、A君の仲間だったから私とも遊んでいたようだ。あちらは、はっきりと記憶があるようなので、こちらとしてはなんとも気恥ずかしかったのだけど、不思議な縁ってあるもので、なんとも嬉しい運動会になった。
電車通学の中学にあがってから、照れやいろんな感情が交じり合って、地元の友達とはすっかり疎遠になってしまい、それこそ♪よそいき顔ですれ違ったりしてそのままになっていることが、私の心のちょっとした痛みになっているのだけど、もっと昔の知り合いと再びめぐり合ったことで、自分が心を騒がせなくてもやり直せることって案外いろいろあるんではないかな、という気分になった。
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