涙そうそう
このごろ家で息子が、森山良子作詞、「涙(なだ)そうそう」を歌っている。携帯に内蔵されていたので、覚えたらしい。私までつられて、歌ってしまう。この歌、2001年というから、4年前の歌だけど、つくづくいい歌だなと思う。
そういえば、友人に何年も海外に暮らしている人がいて、春に久しぶりに帰国したので一緒に温泉に行った。時を忘れて語り明かしたのが、いい思い出である。そのとき彼女にプレゼントしたのが、ここ数年日本で流行った曲のCD。選曲は私。適当に順番をつけたのだが、最後の曲が夏川りみの「涙そうそう」だった。友人は帰国してから高速道路を走るときにそのCDを喜んで聴いてくれているそうだ。「世界で一つだけの花」とか、「地上の星」とか、「瞳をとじて」とか、いい歌を沢山入れたけど、彼女が一番気に入ったのが、「涙そうそう」だという。
実は私はここ数年忙しく、名曲のタイトルは知っていても、成り立ちや歌詞をじっくり味わう余裕がなかった。友人にそう言われても、ははあ、夏川りみが死んだおばあさんを思った歌かな、くらいにしか思わなかった。だけど先日森山良子が出ていた歌番組で、その詞にこめられた思いを聞いた。作詞が森山良子だということも、そのときまで知らなかった。
森山良子のデビュー後まもなく、兄が若くして逝った。あまりにも突然で、あまりにも悲しくて、森山良子はその思いを以来ずっと封印してしまったという。ところが何十年もしてから、沖縄の言葉「涙(なだ)そうそう」とは、涙をぽろぽろ流して泣くこと、ということを聞いた時、その亡くなった兄のことを一気に思い出し、この詞が生まれたのだという。それに沖縄出身のBEGINが曲をつけたのが、この歌なのだ。
ああ、そうなんだ、と思う。亡くなった人は、星になり、空から私たちを見ているのだろうか。いつまでもその人は、遺された人の心に生き続ける。くじけたときにも、その弱った心を支えてくれる。優しい思い出にするには、別れをしたあと、思いっきり悲しんで、涙を流すことが大事なんだろう。「さようなら」を「ありがとう」に変えるために。深い、心に浸みる歌である。息子が気に入って歌っているお陰で、しみじみ歌詞を味わいながら私も歌えるようになってよかったと思った。
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