夕方の三十分

詩のこころを読む

posted with 簡単リンクくん at 2005.10.31

茨木 のり子著
岩波書店 (1980)
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昔から好きだった本を再読している。私が初めて読んだのは初版だったのであるが、１９７９年の本だから、かれこれ２６年も前なのだ。そのときに詩人の茨木のり子が選んだ詩は、今も私のこころを深く揺り動かすものばかりである。【はじめに～生まれて～恋唄～生きるじたばた～峠～別れ】人生の流れのように、テーマにそって選んだ現代詩の数々。それをつむぐ、茨木のり子の美しい言葉。

それでは、昔も今も私が深く感動した二つの詩を紹介しよう。一つは、会田綱雄の「伝説」。忘れられない最後の三節。もう一つは、黒田三郎の「夕方の三十分」。

黒田三郎の詩は、特に好きだ。戦争から帰って希望を失っていた男が、「ひとりの女と」出会い、「僕はまるでちがって」しまい家庭をもつ。しかし、妻は体を悪くして、男は仕事から帰ると、小さい娘のユリの相手をしながら酒を飲んだりして、つきまとう娘と喧嘩して、ようやっと夕飯になるとまた、父娘の穏やかなときがくる。その様子をうたったのが、「夕方の三十分」。あとから詩集を買ったのは、会田綱雄と黒田三郎だけ。黒田三郎は、特にやっぱり気に入っている。

私は詩が好きだ。この本を再読して、しみじみそう思う。