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2005/10/29

遠藤周作『おバカさん』

遠藤周作の『おバカさん』を読んだ。この間の礼拝説教の題が「どこまでもおバカさん」というもので、内容を聞いてみると、遠藤周作のこの本からヒントを得たことがわかったので、これは読む価値あり、と思ってのこと。

おバカさん (角川文庫 緑 245-2)おバカさん (角川文庫 緑 245-2)

角川書店 1962-08
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この小説は、1958年の新聞小説。文庫本になったのも1962年というから、私の生まれる前のことである。東京にフランスからやってきた正体不明のナポレオンの末裔というガストンという男を、かつて文通相手だった男とその妹が東京を案内して歩く話。馬のような風貌なうえに何をしに日本に来たのかもわからぬうだつのあがらぬフランス人に、妹のほうは幻滅を感じる。しかしこの男、野良犬やかわいそうな人にばかり興味を示し、心優しく、殴られれば殴り返さず、かえってその相手に深い哀れみを感じたりするのである。

まさに、イエス・キリスト。最後には、南方の島で上官の嘘のため罪を着せられた兄の復讐を果たすためにある男を殺そうとしている遠藤という男と知り合う。そして彼に罪を犯させないために、命を落とすのである。

物語では、初めはガストンを馬鹿だと思っていた妹も、途中で考えが変わってくる。

素直に他人を愛し、素直にどんな人をも信じ、だまされても、裏切られてもその信頼や愛情の灯をまもり続けていく人間は、今の世の中ではバカにみえるかもしれぬ。だが彼はバカではない……おバカさんなのだ。人生に自分のともした小さな光を、いつまでもたやすまいとするおバカさんなのだ。

このくだりが、この小説のいわんとするところなのであろう。

最後になったが、この小説では舞台となる東京・渋谷でも、星が降るほど見えたようなので、私の生まれた頃はまだ都会でも星空がきれいだったのだなあ、と私は思ったのだった。

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コメント

 私も15年ほど前にこの小説を読みました。そして、不思議なことに、事あるごとにガストンのことを思い出すのです。

 イエス様って、ガストンのような人だったのかもしれないって、ふと思います。西洋画の中のイエス様って顔立ちが整っていて、遠い存在に思えますが、ガストンって、すごく身近な人に感じます。

 妙に心に残って離れない小説の一冊です。

 おバカさん・・・この言葉が何とも言えないです。

 渋谷と言えば、童謡の「春の小川」が生まれた場所、今の渋谷の風景からは到底想像がつきません。小川がさらさら流れていたり、星が降るように見えたりする時代が渋谷にもあったのですね。

投稿: まざあぐうす | 2005/11/05 19:10

まざあぐうすさん、♪春の小川って渋谷にあったんですか。知りませんでした。
今の街からは想像もつきませんよね。

『おバカさん』ですが、遠藤周作のとぼけた表現で笑ってしまいながら読んだんですが、なんとなく読み終えたのに余韻が残るのです。

自分や家族を守るために、完全武装して暮らしている人たちが多い中で、このようなおバカさんのガストンのような生き方は、際立って見えます。

昔いじめられている人を助けて、代わりに自分がいじめられたとき、母から馬鹿だと言われて落ち込んだことがあります。
馬鹿だといわれたけれど、私は正しいことをしのだと思いました。間違ってはいないと。
私はそのとききっと、まだ幼くて守るものも何もなかったから「おバカさん」だったのだと思います。

投稿: ののか | 2005/11/05 23:41

先日、ある大先輩の講演を聴きました。
「痴字を以て道を愛す」という話でした。
ふっと思い出したのが20年以上前に読んだ「おパカさん」でした。
 いつの次代も相だと思いますが、今の時代ではことさら難しい生き方だと思います。一方、今の時代がもっとも必要としている生き方かも知れません。
かといって、このような生き方は自分ではできませんし、まして人に勧められることでもありません。
 せめて、このような人に憧れを持ち続けられる人間でありたいと思っています。今のところは大丈夫。
 

投稿: ラピス | 2012/02/20 13:07

ラピスさん、コメントありがとうございます。

このお話は、なかなか忘れがたい印象的なものですね。私も自分の立場や欲を忘れて、こういう生き方をしてみたいものだと憧れてしまいます。

投稿: ののか | 2012/02/21 08:34

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