『大人の友情』
まざあぐうすさんのほのぼの文庫に紹介のあった河合 隼雄の『大人の友情』を読んだ。感じるところは沢山あるのだが、なにしろ読書感想文が苦手な私としては、文章にするのが大変。
臨床心理学者である著者の相談室を訪れた人たちとの会話を交え、いろいろな友情のありかたを考察する。読みやすくて、必ずどこかで、あっと思い当たる箇所が誰にでも出てくるような本である。特に、引用されている本が印象的。中でも読んでみたいと思ったのが、白洲正子いまなぜ青山二郎なのか(これは何度も引用されていたし、面白そう!)、 丸谷才一挨拶はたいへんだ。もう一度読みたいと思ったのは、夏目漱石『こころ』『それから』『坊ちゃん』、シェイクスピア『ヴェニスの商人』、武者小路実篤『友情』、太宰治の『走れメロス』。
友だちがほしい~友情を支えるもの~男女間に友情は成立するか~友人の出世を喜べるか~友人の死~「つきあい」は難しい~碁がたき・ポンユー~裏切り~友情と同性愛~茶呑み友だち~友情と贈り物~境界を超える友情
章のタイトルだけで十分興味深いが、文章が易しいのでとても読みやすかった。特に私は、茶呑み友だちのところが気に入った。私が好きな関係は、まさに茶呑み友だちかもしれない。老後は気の合う友達と、のんびりゆっくり楽しくやりたい。まさに茶呑み友だちである。それから、ロマンチックラブを通り越したような中高年の茶呑み友だちにも、恋愛はあるようである。野上弥生子と哲学者の田辺元の関係は、なんだか崇高なおとぎ話のように思えた。それぞれパートナーを失ってからの北軽井沢での出会いから~往復書簡にみられるつきあいの深まりは、感動的である。
終わりにかかれた文章に、友情とはなんぞや、という問いかけに答えた部分がある。あらゆる人間関係の基盤としてそれはあり、人間の生き方を豊かにしてくれるもの、という。そして、万能感に支配されているように見える現代において、かえって人間は大変な孤独や閉塞感に悩まされる。だから、ぎすぎすした関係に潤いを与えてくれる友情ということが、現代においてきわめて重要になってくるのも当然である。そして、友と友を結ぶ存在としての「たましい」などということに、少しでも想いを致すことによって、現代人の生活はもっと豊かで、幸福なものになるのではないだろうか、と結ぶ。
「たましい」という言葉に、心を揺さぶられる思いがした。私は今まで友情に支えられてこそ生きてこれたと思っているので、なんだか涙が出そうな気持ちになった。
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コメント
ののかさん、こんばんは。
引用されている文学作品、私も再読したくなりました。そして、一番面白そうだなと思ったのは白州正子さんの「いまなぜ青山二郎なのか」でした。
興味が広がる内容でしたね。清濁併せ呑むような人間の友情を改めて知らされたような気がします。
さすがっ!河合先生って感じですね。
トラック・バックとコメントありがとうございました。
投稿: まざあぐうす | 2005/11/18 22:52
ののかさん、こんばんわ。sadaです。
白州さんに二郎サンや小林(秀雄)を紹介したのは「河上徹太郎」です。奥さんとも旧い友人であり、次郎さんの理解者だったと憶えています。
昔に勉強したことがこんな風に役立つ?なんて、、、
少し前に新聞小説「人が見たら蛙になれ」は二郎さんのことですよ。
投稿: sada | 2005/11/19 00:35
まざあぐうすさん、おはようございます。
よい本のご紹介ありがとうございました。
引用の本、これから順次読もうと思っています。
これからもどうぞよろしく(*^。^*)。
投稿: ののか | 2005/11/19 09:51
sadakichiさん、おはようございます。
おお、さすが物知りのsadakichiさんですね。
白洲さんの本これから読むので、
この人たちの知り合いになった経緯は
まだ知らなかったのです。
青山二郎さん、興味深い人だったのですね。
投稿: ののか | 2005/11/19 09:53