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2006/02/10

2人のヒロイン

この間観た「スタンドアップ」。それから、昨年に観た「Dear フランキー」。2人とも夫のDVから逃れた若き母が主人公。この2人のヒロイン、立場は同じだが、やることは全然違う。

シャーリーズ・セロン演じるスタンドアップ(原題:North Country)の主人公は、高校時代に望まぬ妊娠をして産んだ息子を、忌まわしい事件とは切り離して「自分だけのいとしい子」として育て、ようやく夫にめぐりあい今度は娘を出産するが、夫は暴力で家族を支配する男だった。夢を見ることを許されなかった、過酷なまでの運命。だから脱出してからは、力を振り絞って1人で現実に立ち向かう。男の庇護を受けずとも2人の子どもを養いたい。彼女は鉱山に就職するが、父親は同じ職場にやってきた娘を歓迎はしない。男の職場での、女達への執拗なセクシャルハラスメントが続く。想像を超える壮絶さ。実話だけに、非常に重い。だが彼女は、立ち向かう。自分の給料ではじめて子どもたちをレストランに連れていったときの表情。子どもたちにプレゼントを買ったときの晴れがましい笑顔。シャーリーズ・セロンはこの演技で、再びアカデミー賞を獲るのだろうか?彼女が15歳のとき、母親はピストルで正当防衛のため夫(セロンの父)を撃ち殺した。彼女が役にこめた思いは、普通の女優とは違うものであったに違いない。

これにひきかえ「Dear フランキー」の若き母親は、弱い。息子の聴力を夫の暴力で奪われたのだ。彼女は、結婚に夢を抱いてこの男と結婚した。少女の心のまま嫁いだが、裏切られたのである。自分ばかりか息子までも傷つけられた。だから逃げ出した。しかし心の傷は、深かったのである。だから逃げ続ける。見つからないように、逃げ続けるのだ。夫の影におびえながら。しかし時を経て、支えてくれる人を見つけた彼女は、やっと現実と対峙する。怖かったろう。困ったろう。だがそうやって、彼女は成長したのだ。

2人のヒロイン。私だったらどっちかな、と考える。2人とも、実に思慮深い。なかなか乗り越えられない壁を、日々の生活に追われながらも知っている。動と静の違いこそあれ、暴力を憎み、子を愛しているところは共通。母親はね、子どもの体と心を守るためなら、何でもやるものなの。それがよくわかる映画だった。

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