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2006/02/12

White Lie

2人のヒロインを書いたのち、独りのときふとその続きを考える。

「Dear フランキー」の主人公リジーは、一人息子が幼い頃夫の暴力に耐えかね家を出た。赤ちゃんだった息子に、父親の記憶はない。リジーはその子が成長していく過程で父親のことを、「外国船で世界中を回っている船乗り」であると説明した。父親の暴力が原因で聴力が奪われたのだなどと、当の本人に告げるのはあまりにも酷である。息子に夢を与えるために、リジーは嘘をついてその父になりかわり世界の港町からの手紙まで自分が用意して届けるのである。10歳になった息子はその船がその町に来ることを知り、父親に会えると思い胸をふくらます。リジーは船が寄港している間パパの役をしてくれる男を探し出し、また息子に嘘をついて夢を壊さないように努力する。最後には息子は母の嘘を、いつのまにか見破っていたことがわかるのだが。

「スタンドアップ」の主人公ジョージーもまた、父親の記憶の無い息子に「父親は軍隊に行ったまま亡くなった」と話して育てていた。10代でシングルマザーになったジョージーは、暴行のための妊娠だったにもかかわらず、自分の中に宿った大切な命を守ることを決心し、以後全ての生活が変わったとラスト近くで息子のサムに述べるくだりがある。できることならその事件のことを知らせたくなかった、そのためについてきた嘘。父親の名前を訊かれても、親にすら告げなかったのは自分に宿った命が忌まわしいものであると思いたくなかったから。自分だけの宝物だと思いたかったから。その後結婚をして幸福な家庭を築きたかったジョージーだが、その夫は彼女を暴力でいためつける男だった。だから、限界を感じて脱出して故郷に帰り、自立して子どもたちを養うために鉱山へと働きに出たのである。しかし男の職場に進出した女達への反発は、陰湿きわまりないものだった。思春期のサムにとって、鉱山でのセクシャルハラスメントを訴えるために立ち上がった母親のために裁判で自らの出生の秘密があかるみになったことは、どんなにつらい試練であったことか。「あばずれ女」と人びとに母親が軽蔑され、自分までそのために学校でいじめに遭い、母親を世界中で一番憎いとさえ思ったサム。しかし、ジョージーから全てを告白され、母親の本当の心情を知ることで再び立ち直っていく。

世の中は哀しい。人が誇りを失わず生きていくのは、なんて大変なことなんだろう。

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