『ラチとらいおん』

この絵本の主人公のラチは、怖がりやである。友だちさえも怖いので、いつも一人ぼっち。そんな彼の憧れは、絵本に描かれた勇ましいライオン。そんなラチの元に、ある日やってきた可愛いらいおん。ラチは笑うが、実はこのらいおん、とても勇気があって強いのである。ラチを鍛えて、自信をつけさせ、少しずつ仲間のうちにはいっていけるようにする。いつもお人形のようなそのらいおんは、ラチのズボンのポケットで、ラチを応援しているのである。

ある日ラチは、のっぽのいじめっ子に困らされているクラスメートたちを、勇敢に助ける。ポケットにらいおんがいてくれると思うと、今やラチに怖いものはないのである。ところが、ところが。ポケットに入っていたのは、その日はらいおんではなくて、赤いリンゴだったのだ。家に帰ると、らいおんの手紙がおいてあった。らいおんの別れの手紙を、ラチは涙を流して読む。しかし残されたラチは、以前の弱虫のラチではなかった。らいおんの力を借りなくても、ヒトリで立つことのできる、自立した少年へ成長していた。

可愛いライオンのオレンジと、弱虫の少年ラチの緑の色が印象的なこの絵本。ラチが怖がる暗闇の黒を打ち破る、明るいオレンジと緑。最後のらいおんの手紙は、きれいな緑の文字。大人が読んでも胸をうつすばらしい手紙。友情っていいなあ。　　************************************************

私の子どもたちは、この春から小学校5年生と1年生であるが、上の子どもは大変な怖がりやである。暗いところが、特に苦手で、夜は真っ暗だと怖くて眠れない。暗い部屋に行くときは、勇気が足りないことも多く、小さな妹にあれやこれや理由をつけてついてきてもらうこともしばしば。今日も風呂のスイッチを入れてくるよう2人に頼んだのだが、2人のうち特におにいちゃんのほうは、心底暗い廊下が怖かったらしく、「もう二度とやりたくない」とあとから宣言されてしまった。2人で行っても駄目だったらしい。

そんなことがあったので、今日私が選んだ絵本はこれ。娘は喜んだけど、久しぶりに一緒にこの絵本を読んでみたかった息子は、隣でハリーポッターを読んで笑っている。ああ、君にこそ、この絵本を繰り返し読んであげたいんだよ、お母さんは。「わかってるって。」と心の中では思ってるんだろうけどね、君は。