玉虫の思い出
昨日の朝日新聞(2006年9月2日)朝刊の家庭欄、ひとときの投稿(「玉虫、心配しないで」山梨県の56歳の主婦)を読んで。とても心にしみたので、ここに紹介したい。それは、窓辺に現れた玉虫を見て、亡き夫が残された家族を見守っているしるしのように感じた、ある主婦の文章。
生き物が好きだった夫は、この4月に亡くなったばかり。お盆間近のある日、妻がベランダで洗濯物を干しているときに、羽音をさせて竿にきれいな玉虫がとまったそうだ。それをそっと両手に包み込み、彼女は息子に声を掛けた。ふと、亡くなったばかりの夫が玉虫に姿を変えて訪ねてきたように感じたからだ。息子は玉虫を携帯で写真にとり、母は「お父さんなの?帰ってきてくれたの?」「また、私たちの所に来てね?」と言って放したという。以来、一週間以上も毎日、その玉虫は家族の前に現れ続けたそうだ。そして8月15日に夕方、玄関から飛んでいくのを息子さんが見て以来、姿を見せなくなったというのだが、それは落ち込みがちな主婦を前向きな気持ちに変えさせる、心温まる出来事であった。
そう、玉虫は、珍しい虫である。私もこの歳になるまで、たったの一回しか手にしたことはない。幼い頃、たぶん一番上の兄とだったと思うのだが、自宅の平屋の屋根に出たことがある。たった一度だけのことなのだが、そのときに、熱く焼けた屋根の上に、一匹の玉虫が死んでいた。とても美しい羽根の色に、幼いながらうっとりした記憶がある。たった一度の邂逅も、私には懐かしい、美しい思い出である。
あの輝きは、生きているものと死んでいるものを繋ぐ、不思議な光なのかもしれない。自分の記憶の中の玉虫の光を思い起こしながら、そんなことを感じたのだった。
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コメント
ののかさん、こんにちは。
私もこの記事を読んで、ジーンときました。
玉虫って、見たことがないので、どんな虫なんだろうと気になっていました。その虫をののかさんは、ご覧になったことがあるのですね。
>とても美しい羽根の色に、幼いながらうっとりした記憶がある。
この文章だけでも、いろいろ想像できます。
そんなに美しい虫がいるなんて、なんだか
とてもロマンチック♪
投稿: ミント | 2006/09/05 10:48
ミントさん、コメントありがとうございました。
玉虫といえば、玉虫厨子っていうのありましたよね。
昔の人は、沢山捕まえて工芸品を作ったんですね~。
投稿: ののか | 2006/09/06 20:26