無銭優雅

無銭優雅

posted with 簡単リンクくん at 2007. 4.23

山田 詠美著
幻冬舎 (2007.1)
通常2-3日以内に発送します。

オンライン書店ビーケーワンで詳細を見る

私が昔読んだ短編で心に残っている作品に、壺井栄の「あたたかい右の手」がある。ブログに以前そのことを書いたことがあるのだが（→こちら）山田詠美の4年ぶりの小説にこの作品が使われていることを知って、読んでみたいと思った。私は山田作品は初めてである。読んでみたら、作家にいだいていた私の印象とは全く違う、やさしい作品であった。

主人公は、「あたたかい右の手」の中で死んでしまう女の子と同じ「慈雨」という名前の、42歳の女性である。その恋人は、「栄」という名前の45歳の塾講師。この二人の恋愛が、何気ない日常とともに描かれる。

主人公の慈雨は独身で、親の家にいまだに住んでいる。同じ42歳の女性として、私とはあまりにも立場が違うので共感できるかと言うと出来ない部分の方が多いけれど、判る気がする。

うらやましいなあ、と読みながら思った。世間体がなんだ。大事なのは、分かり合えること。いたわりあえること。お金も名声もない。つつましいけれどもそんな相手にめぐり合えて、慈雨はしあわせになった。めでたし、めでたし。