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2007/07/20

対岸の彼女

一週間前一気に読み上げたのは、『嫌われ松子の一生』。面白かった。九州のお堅い中学教師だった松子が、ふとしたことがきっかけで風俗の世界に生きることになり、殺人を犯して服役後、今度こそと小さな幸せを夢見るがまたも裏切られ、ついには落ちぶれて命を落とす話。彼女の死後、自分に松子という叔母がいたことを初めて知ったという設定の甥が、松子の人生をたどっていくという語り口。悲惨な話であるが最後まで読み終えて、なぜかすがすがしい感じすら覚えた。よくできた小説であった。47歳でボロクズのように死んでしまう松子が、晩年いつも眺めていたという川の堤防を、彼女の死後彼女と関わりのある2人の人物が訪れるところが私には特に印象深かった。故郷の筑後川に似た荒川の川辺に、松子はどんな思いで佇んだのだろう。流れ流れて故郷と遠く離れた場所に暮らし、何の希望も見出せない生活の中で、誰とも大切な言葉を交わさぬままなぶり殺しにされた松子。一見なんの意味も見出せないような生涯を送った松子であるが、彼女が求めていたものは、きっと私が求めているものと同じだと私は思った。川を眺めていた松子のように、私にも川を眺めた日があった。

今日読み終わったのは、角田光代の『対岸の彼女』。見事な小説だと思う。私はとても好きだ。舞台は群馬は渡良瀬川。その川原がお気に入りの二人の女子高生は、無邪気に戯れ人生を語り、友情を深め合った。学校には何も意味を見出せない彼女たちは、それから忘れられないひと夏を過ごす。いつまでもどこまでも、一緒にいられるような気がしていた葵と魚子(ナナコ)。しかし、二人の未来は…。それから20年もの時を経て、子育てに自信を持てない専業主婦の小夜子は、同じ大学の出身であるという葵が社長をつとめる会社に仕事に出ることで生きがいをみつける。魚子と別々の人生を歩んできた葵は、30代半ばになってどんな価値観を持つようになっていたのだろう。葵の心に遠い日の川の眺めは、そして人を信じる気持ちは、残っていたのだろうか。

私の川をめぐる記憶。それは、川の対岸に落ちる燃えるような夕日をずっと眺めたこと(♪ハルジョオン・ヒメジョオン)。ほんの一瞬すれ違っただけの、私とあまりに違う人。なぜ一緒にいたかったのかもう思い出すこともできない。それからもう一つの記憶。何もかもが嫌になって合宿所を飛び出し、駅までの川沿いの道をコーラを飲みながらポテトチップを食べて歩いた。なぜあの時あの子が私に付き合ってくれたのか、どうしても思い出せない。ふざけて笑いながら、私たちは何を話したのだろう。あの朝そのまま一緒に東京まで帰った友達の消息を、今は誰も知らない。もう一つ忘れられないのは、白に緑のラインをひいた小さな電車がカタンコトンとわたる橋のこと。あの川原には、懐かしい思い出が多すぎる。

子どもたちを遊ばせたあの川原に、もう一度行ってみたい。。

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コメント

お晩です。
私も丁度角田さんのを読み始めました。
ボツ校了になっていたものを集めたらしい変わった本です。題して「ロック母」!ロックマザーって読ませるんでしょうね。
一発目のやつから主人公のアドレナリンの滴りが伝わってきそうです。元気あるとき?にお薦めです。

投稿: sada | 2007/07/20 23:18

yuzukiさんへ。

>狭くなったり、広がったりの川幅を最後まで感じながら読了したことを覚えています。

できることとできないことを見極めること、優先順位をつけること、、、大事ですね。
でも線引きが難しくて、流されたりしてしまうのが人間の愛らしさだったりするのかなと、、、


コメントありがとう…。

投稿: ののか | 2007/07/21 11:56

sadaさんへ。

お~そうですか、では元気があるときにしますね、『ロック母』…。

投稿: ののか | 2007/07/21 11:58

とても心を動かされる記事でした。
私にも川にまつわる思い出がたくさんあります。
美しい思い出もあるけど、なぜか心痛む思い出が多いな。
それでもなぜか私の近くには、いつも川がある。
今も、毎日眺めるあの川は、すべてを知って、私を包み込んでくれてる気がしてます。
学生時代に語り合ったあの子。
私はその「あの子」と今でも、年に1度会いますが、微笑みながら他愛無い会話を交わす私たちの人生は、あまりに違う場所にあります。。

投稿: rilamegu | 2007/07/21 23:26

rilameguさんへ。

川はゆったりと流れていくんですよね~。
そしてすべてを知っているような気がするというのは、私も分かる気がします。

私は夜の河に映るネオンなんかも、いいな~と思っています(川を電車が渡るときに見えるんです…)。

投稿: ののか | 2007/07/22 13:42

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