山川千秋・穆子『死は「終り」ではない』
この本は、1988年の10月に食道がんで亡くなった国際派ニュースキャスター山川千秋の闘病日記。彼の側らには熱心なクリスチャンである最愛の妻・穆(きよ)子がいた。山川千秋の死後出版されたこの本には、二人の出会いや病状の変化の様子などをおりまぜ、家族の歴史が凝縮されて記されている。発刊当時私は新宿でOLをしており、昼休みには心を鎮めるために、近くのビルにあるキリスト教書店でぶらぶらするのが常だった。そのときに見つけたのがこの本。早速買い求め、帰り道に読んで涙が止まらなかった記憶がある。そのころ私がクリスチャンになりたてだったせいか、苦難に見舞われた家族がいかにその運命を受け止め、4人で千秋の最後の日を迎えたか~副題によるとガンとの闘い180日と書いてあるから半年の間のできごとだったようだけれど~その後の家族の歩みはいかなるものであったろうかと。
一家の大黒柱である山川千秋は、55歳のとき死の宣告ともいえるガンの告知を受けたあと、妻の信仰に導かれキリスト教に入信した。彼は聖書を読み、人々の祈りに感謝しながらしっかりと現実を受け止め、最期には家族ひとりひとりに生きる力を与えるメッセージを遺してこの世を去った。「死は終りではない」と。「また会う日が来るのだよ」と。
私は最近父を亡くし、遺された母に何か力がわくようなメッセージを贈りたいと思った。そこでこの『死は「終り」ではない』を探したところ、今は絶版だという。ということで、早速復刊ドットコムでリクエストしてみた。
この本はキリスト教色の濃い内容であるが、このような困難に出会ったときどう対応するか、ひとつの勇気ある家族の例として、再び一般の多くの人に読んでいただきたい本である。私の場合は、この20年の間に手持ちの本がどこかに見当たらなくなってしまったので、古書を探して購入した。図書館で探せばきっと見つかったはずだが、最近図書館に行くのが面倒くさくて駄目なのだ。本がやっと手元に届いた。時を経て読み返したが、やはり私はこの夫婦愛には心動かされる。
生涯にただ一度、心から愛せる人に出会えたのに、二人の息子を残して先に夫が逝ってしまう。そんな悲しいことがあるだろうか。しかし、永遠の別れではないのだ。またあの世で会える。また会う日まで、しばしの別れと考えれば、悲しみも少しはやわらぐのではないか。それが単なる気休めとしか思えない人には戯言かもしれない。実際に死んでみないと、天国があるかないかわからない。でも希望をみいだせるから、私はやはり「死は終りではない」と思いたい。
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コメント
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私は父の影響を強く受けています。
めっきり弱ってしまった父。
いろんなことに思いが巡ります。
投稿: 轍 | 2008/05/27 23:41
轍さんへ。
コメント&トラバありがとうございます。
ボブ・ディランも歌っているんですね。
思い出しておくれ~そうですね、亡くなった人は思い出してほしいでしょう。
私は今朝も、父の遺影とお話をしました。
投稿: ののか | 2008/05/28 10:11