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2008/07/17

『百まいのきもの』

近くの地区センターで石井桃子訳の岩波こどもの絵本『百まいのきもの』を借りてきてあったので、こどもに読んできかせるまえにと目をとおした。『百まいのドレス』という名前であらためて復刊されたらしいことは知っていたが、まさかこういう内容の本だとは。少なからず衝撃を受けているところである。

内容は、アメリカのある町の学校の女の子たちの間で、ワンダという母のないポーランド人の貧しい子がいじめられる話である。毎日同じ青い服着てくるそのワンダには、友達はひとりもいない。名前やかっこうが変だというので、裕福な子達は特に友達になろうともしない。ところがその子がある日、私は百まいのきものを持っていると言ったことから、激しいいじめの対象となるのだ。

いじめているリーダーのペギーのいそぎんちゃくのような存在のマディーは、実は自分も貧しくて、ペギーのお下がりの服を母親が仕立て直しているドレスをいつも着ている。なんでこんないじめが始まってしまったのだろう、みんな本当はいじわるな子どもたちじゃないのに、とマディーはワンダをいじめるペギーの横で、いつも決まり悪い思いをしていた。やがてワンダがいじめに耐え切れず、父親と兄とともに引っ越してしまったあと、強い後悔の念にさいなまれるのである。

ワンダがいなくなってから、校内のコンクールに応募した生徒のなかで一等をとったワンダの作品~色とりどりのすばらしいドレスのデザイン画~100枚が教室に貼り出された。それはそれは誰にもまねできない、美しいデザイン画なのであった。そしてマディーとペギーは…。

取り返しのつかないことが、世の中にはある。人間関係では特に。考えさせられるこの本を、石井桃子さんは100歳の誕生日に、新しい訳にしてこの世に出した。いつまでも忘れられない名作を、まだ読んでいない方にぜひ読んでもらいたいと、私は思った。

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