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2008/08/08

ニッポンの夏

お盆もそろそろなので、春に亡くなった父のことを幾つか思いだすままに書いてみることにする。

元気なころの父とレストランに入ると、まず出されたおしぼりを広げて顔を拭く。水がなくなるとウェイトレスに「お冷や頂戴。」なんて大きな声で言う。「お冷やってなんだよ?」「大きな声で言わないでよ。」と私はうつむく。父のなすことすべてが、一緒にいると恥ずかしい気分がしたものだ。この場合のお冷やとは、冷たい水のことである。言われなくても出てくるのだから催促しなくてもいいのに、特別扱いしてくれ~と自己主張するところが我が父の特徴だった。

父は佃煮が好きだった。真黒な佃煮のどこがいいのか、子どものころの私にはよくわからなかったのだが、今ではいつのまにかそんな父と同じように、私は佃煮が大好きになってしまった。特に昆布の佃煮は気に入っている。おにぎりに入れてもお茶漬けにしても、とってもおいしい。ほっとする味だ。ついでに私のこどもたちは、小さい時からこれが大好きだ。~そんな父が食卓で張り切ってすき焼きをつくると、調味料をどばどば入れるので、できあがりはとても味が濃かった。だから家族は生卵で味を薄めて肉等を食べるわけだが、私は生卵が子どものころ苦手だったから、すき焼きの楽しみがよくわからなかった。すき焼きで楽しかったのは私たちが当時「ぷるんぷるん」と呼んでいた白滝を、奪い合って食べたことだろうか。ともかく味の濃いすき焼きは、生卵が好きだった父には大満足の味付けだったに違いない。そういえば父は、素麺の汁にも生卵を入れいていた。そのほかの好物は、豆腐とさくらんぼ。こうして書き出すと、なんだか子どもっぽい。

父で思い出す言葉というと、「カヤリコ」である。「カヤリコ」とはなんだ?と私は今までよくわからなかったが、その言葉が蚊取り線香のことを示しているのはわかっていた。今朝そのことを思い出して調べてみたら、「カヤリコ」とは「蚊遣り」の線香らしいとわかった。大家族でわいわいと東京で育った父の周りの大人たちが、「蚊遣り香」という言葉を使ったのだろう。現在私は、木や池がある実家に暮らしているので、夏になると蚊取り線香にもいつもお世話になっている。しかしこの家には、蚊遣り豚というのがない。蚊取り線香をつけるなら、蚊遣り豚があったら風情があってよかろう。私はうちの子たちに「蚊遣り」という言葉を知ってもらいたいと思うので、どこかの店で蚊遣り豚を買おうと今思いついた。そうするとなんだか「ニッポンの夏」って感じがしていい。ついでにキンカンも買ってこよう。これまた父がよく使っていたから。

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