小さい幸せ
昨晩は、まんまるお月さまが美しい夜だった。月は夕方姿を現して、暗くなってからどんどんと晴れ渡った夜空を、高く昇っていった。
寝る前に空気を入れ替えるために閉めてあった雨戸をあけ、娘と一緒に暗い寝室から空を見上げると、月はまるでスポットライトのように天空で光っていた。「まんまるだね。」と、娘が夜の空気を吸ってつぶやいた。不思議なことに夜なのに、遠くの森からカァーカァーと、数羽のカラスの鳴き声が聞こえた。満月の夜には、カラスは眠らないのだろうか。
そして目を落とすと、遠くに夜景が浮かび上がっていた。30年も前、学習塾の帰りのバスから見た夜景とは、明るさが違うなあと私は思った。あの頃は「陸のお星さま」と私が名付けたように、街のあかりはまばらではかなく、詩的に美しかった。しかし昨晩私の目に映ったのは、ぎらぎらとした街のあかりだった。そのときすぐに、
名作絵本 『ちいさいおうち』
の夜景の場面が頭に浮かんだ。私はちいさいおうちのように、街のあかりへの憧れをすっかり無くしてしまった。しかし毎晩子どもと一緒に絵本を読んでから眠る小さな幸せを、今の私は知っている。小さな幸せに感謝して、小さな暮らしを守る幸せを。
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