時が滲む朝
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私の家の隣に住んでいるのは、私と似たような境遇の家族。いろいろ問題もあるようだけど、その台所から聞こえる夕餉の支度の音と美味しそうな料理の匂いは、いつも私を励ましてくれる。
何があっても腹は減る。だから家族のために、家族の喜ぶ料理を作る。そんな毎日の連続。そうしていつの間にか目の前の大問題は解決し、また次の悩みに陥る。しかしどんな時にも、どういうわけか腹は減る。だから目先の不安をかかえたままでも料理をつくって家族に食べさせ、おなかが満ちたら寝る。起きる。ご飯を食べる。一日の仕事をこなす。ご飯を作って食べさせる。そうやって時が流れていく。
隣家の夕餉の支度の音と料理の香りは、「こんなはずではなかった…」とか「なんでわたしばっかり…」とつぶやきたくなる私の弱い心を、強く立ち直らせてくれる。よくやってるじゃん!私だけじゃないんだよ、と。
そんな私が昨日から今朝にかけて、ささっと読んだのがこの小説。芥川賞なのか~そうなんだ。天安門事件のころの中国を生き、それから日本にわたり苦労して小説家になった作者が、今の私たちに伝えられることが、この小説なんだと感じた。
私たちは何のために生まれて、何をなして死んでいくのか?この小さな、しかしなかなか答えを見つけられない疑問をかかえて、私は暮らしてきた。朝になり目覚めると、一日の予定を考える。用事が終わるたびに考えるのは、家族のためのご飯の献立。しかし幸い料理は好きな仕事なので、この生活が何年続いても、今のところ私には苦にならない。料理が好きでよかったな。お隣さんもお料理が得意なので、続いているんだろうなあこういう生活が。
今朝も早起きして、私は庭に出て花を眺め鳥の声を聞き、ゆったりと過ごした。大急ぎで立ち回る前の、静寂のひととき。思い返すと何年の時が過ぎたのだろう。そろそろここへ越してきて、6年がたつ。
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コメント
天安門事件・・・あれからもう20年も経ったのですね。
日本がバブルで浮かれているのと同時に、世界では劇的な事が多かった年でした。
と同時に私のこれまでの半生で、一番好きな年でもありました。
「こんなはずでは・・・」と思っていてもやり直しが容易に出来たし、何より楽しかった。
私にとっての青春の年でした・・・。
投稿: まっき~ | 2009/06/14 15:40
まっき~さんの青春時代、なんだか素敵なことがあったんですね。
良い思い出は、人生を支えます。
私にもきらきらした思い出があってよかったなと思ってます。
投稿: ののか | 2009/06/17 07:19