おふくろの味
おふくろの味、という言葉があるが、私の場合若いころこの言葉はピンとこなかった。なぜかというと、ホウレンソウの胡麻よごしとかごぼうのきんぴらとか、自宅では食べたことなかったし、普通のお惣菜がわが家の食卓に並ぶことがなかったのである。
母はちゃんとした家政科を出ており、ご馳走なら作れる人だった。中でもおいしかったのが、ボルシチとか芙蓉蟹など。酢豚も美味しかったけど、おふくろの味という感じではなかった。その後、餃子が名人のように上手になったり、油琳鶏(ユーリンチー)に凝ってみたり、春巻きがつくれるようになったり変遷があったが、一番よく食卓に上ったのは、鯵の開きと常夜鍋(ホウレンソウと豚肉の鍋・大根おろしと薬味としょうゆで食べる)だったか。
しかし、中学高校を通して作ってもらった弁当に入っていただし巻き卵は、天下一品だった。毎日毎日ま~いにち入ってたので、ありがた味は相当薄れたが、今でもこの卵焼きは美味しいので、母は頼まれると孫のために焼いてくれる。
そして昨日の晩は、久々にはりきってロールキャベツを作ってくれた。私は雨に濡れて仕事から戻ってへとへとだったから、助かったし、それから丁寧につくったロールキャベツは温かくて美味しかったから、とても嬉しかった。まだお鍋にあるからおかわりしなさいと言われ、喜んでもう一つよそって席に戻ってナイフとフォークで食べ始めたら、いつまでも具が出てこない。私のは、たった一つの外れだったのだ。私は、北海道のビールを飲んで上機嫌の母をはじめ、みんなに笑われてしょんぼり。でもロールキャベツは美味しかった。私の母は変わってるけど、何でもできちゃう不思議な魔法の手とセンスを持っている。それは隔世遺伝で私を飛び越え、私の娘に受け継がれたようだ。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント