甦る感覚と干しトマト
地震から10日が過ぎ、ようやく父の親友の建築士さんにメールを出した。この家を設計した人だ。「お蔭様で、あんなに地震がひどかったのに築50年のこの家には被害がなかった」と知らせたかった。すると、電話で返事がきた。いつものことだが、懐かしいその方の声を聞くと安心する。その方は、自分の設計も悪くはなかったのだろうが、丁寧な腕のいい大工が建ててくれたから、なんともなかったんだとのこと。兎にも角にもありがたいことだ。続いて話題豊富なこの方と、しばらく色々なことを話した。
その方はニュース等で東北の津波に襲われた街の光景を見ると、ちょうど3月でもあるし、66年前の大空襲を思い出すとおっしゃる。疎開先から駆けつけて自宅になんとかたどりつこうというとき、その角を曲がったら家だというところで目の前に広がったのが、突然の一面の焼け野原だった。これは現実なんだろうかと呆然となったその時の感覚が、今甦るということ。当時の中学1年生には、それは大変なショックだったろうと思うと、私は胸がいっぱいになった。
震災以来の買い占めパニックに、私はすっかりまいっている。今度は水と言われても、もうついてはいけない。浄水器の性能を確かめ、それにすがるしかないなと我が身の無力を感じるのみ。そういったわけで食糧の買い占めはできないけれど、家にある乾物をこの際利用して、栄養をつけたいと思っている。……そこで私は思い出した。そういえばこの間この建築士の方にお土産でいただいた干しトマト~料理法が今ひとつ思い出せず、保管棚に置いたままになっていることを。そこでなんとか美味しく料理したいと思って質問したら、丁寧に方法を教えてくださった。必要なのは、白ワイン。保存にはひまわりの油。油はともかく、白ワインならなんとか手に入ると思うので、明日にでもトライしてみよう。うまくいけばとても美味しいのだから、楽しみだ。パスタならまだ、家族で1回分の食事の量は確保できている。
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最近は不安な出来事ばかりで、すっかり疲れている私。しかしこのように人との繋がりを大事にし、小さな喜びに目を向けて日常に近い形で過ごしていくことが、被災地から離れた場所に住む私に今できることではないかと思う。もちろん募金をはじめ、必要とされた物資を送る事はできるからする。あとは子どもたちの心のケアのため、せっかく学んだ技術があるので、活かすことができればとも考えているが、それは無理せず話が来るまで今は待とう。
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