『金の頭脳』 『金の仕事』 (羽仁もと子)
私は落ちこぼれの母親ですが、ずっとこの雑誌の読者です。
これは日本で初の女性ジャーナリストになった羽仁もと子(青森県八戸出身)が、夫・吉一とともに1903年に創刊した雑誌です。私は読者の会である「友の会」に、長男が小さい頃は所属していました。今でも会員だった方々と住む場所は離れても交流があります。味噌作りはここで教わりました。その方々は一番私が苦しいときに支えてくれた、人生の恩人です。
羽仁もと子は熱心なクリスチャンだったので、友の会の例会ではまず讃美歌が歌われますが、会員はクリスチャンとは限りません。家にお仏壇がある仏教の方のほうが、年配の方などは多いです。でも読者は、キリスト教の影響が濃い羽仁もと子の著作を、今でも熱心に読んで人生の道しるべにし、勉強会では合理的な家事や家計簿の付け方、育児の知識などを学んでいます。そしてこの月刊『婦人之友』には、羽仁もと子が亡くなって50年以上たった今でも、毎月羽仁もと子の文章を載せていて、私のような落ちこぼれでも、目を通すたびにハッとさせられたり反省させられたりするのです。
中でも私が好きな文章がこの4月号に取り上げられていたので、一部を転載したいと思います。
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『金の頭脳』 『金の仕事』 羽仁もと子
『金の頭脳』で『金の仕事』をしたい。私は毎日そう願っています。一日のうちで、ほんとうに金のようなよい頭脳(あたま)で、金のような労作を生み出す時間は少ないものです。雑物の刺激のためにつかれて来ると、私たちの頭脳(あたま)は銀になり鉛になります。
(中略)
私たちの朝持っている『金の頭脳(あたま)』が疲れて来たら、『金の仕事』はやめましょう。銀の頭脳(あたま)になっていて、愚痴な気持ちで金の仕事をしようとしていることがよくあります。頭脳(あたま)が銀になったら、気を換えて銀の仕事に移りましょう。銀の頭脳(あたま)で銀の仕事をしていると、その出来栄えが金になるのは不思議な事実です。錫になったら気を換えて、無心で出来る仕事をしましょう。それが私たちの楽天地であり、その仕事がまた金になるのが不思議です。錫の頭脳(あたま)が鉛になったら、気を換えて、すぐに寝ることにしましょう。何も知らずに眠っているうちに、鉛の頭脳(あたま)が金になります。
一年のうちにあんまり多くの仕事がのこるなら、一日のうちにも一と月のうちにもそうならば、それは必ずそのひとに多すぎる責任なのでしょう。どうしても出来ないはずの仕事を、本気で取り捨てることはまた、私たちの一つの『金の仕事』です。
私たち各々に多くの『金の仕事』があります。そうしてすべてわれわれに普遍にして最大なる『金の仕事』は祈りです。
(著作集「思想しつつ生活しつつ・下」より抜粋 1928年12月)
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今疲れている方があったら、できることならすぐに眠って、明日の朝をスッキリ迎えて下さいね。
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