私の赤い靴
幼い頃お隣に、私たちきょうだいをとても可愛がってくれるお姉ちゃんがいた。お裁縫が上手で、私や妹にワンピースを縫ってくれたり、面倒をみてくれたりする優しい人だった。やがてお姉ちゃんは、お嫁に行った。そして私も年頃になり、家を出た。…それから何年たったろう。私は子どもを連れて実家に戻った。それから数年して、今度はお姉ちゃんが家族全員で隣の空き地に家を建て引っ越してきた。色々事情があって、東京のお店をたたんだらしい。たぶんそれは、3~4年前のことだと思う。久しぶりに逢い、ゆっくり話をした。お互いに亡くなった父のこと、そして私のいろんなこと、子どもたちのこと…。その後お姉ちゃんは、日々格闘していた私をそっと励ましてくれ、よく職場近くの美味しいシュークリームを差し入れてくださるのが有難かった。
ある時お姉ちゃんがこう言った。「ののかちゃん!元気のない時はね、赤い靴を履きなさい。気持ちが元気になっていいわよ。私は今まで、辛い時はいつもそうしてきたの。」…そう言われても、赤い靴なんて二十歳の頃履いたきりだ。40を過ぎた私にそう言われても、と当時の私ですら戸惑った。しかし今回九州に越してくるにあたり靴は殆ど捨ててきたので、新しいのを買わなければならない。九州に到着した日、私は靴屋でお姉ちゃんの言葉を思い出した。そうだ、買うなら赤い靴にしようと。
私は九州初日、デザインが気に入った赤い靴と普段履きのスニーカーを買った。しかしなかなか元気が出なくて、赤い靴は下駄箱に入れたままひと月半が過ぎた。…でも今日は、何となくだが朝から赤い靴の気分だった。昨日クリスマス以来になる知人と食事をし、凹んでいた気分が上向きになったからかも知れない。「そうだよ、これから元気出さなくてどうする?」と自分を励ますため、お姉ちゃんのことを思い出しながら私は赤い靴を履いてみた。せっかくなので、出先で靴に合う洋服もそろえた。そのスタイルで自転車に乗り、お洒落な湖畔のカフェで行われている手芸作家たちの作品展でお買い物。
【Flicoさんに誘われたイベント】
家に帰ってからも楽しい気分が続いた。赤い靴って確かにいい。今度はいつ履こうか?などと考えてるところに、娘が帰宅。「ママ~。今日可愛い服だね!」と久しぶりに誉められた。普段は点数が厳しいのに、娘が誉めてくれるなんて珍しいじゃん!ますます嬉しい私。~ということで、今日はいい日だった。お姉ちゃん有難う。赤い靴って本当に、心にも身体にもいいみたい。
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