科学の子・アトム
私には7歳違いの兄がいる。私は小さい頃兄の読んだ「鉄腕アトム」のお下がりを読んでは、わくわくする日々を過ごした。A4サイズの鉄腕アトムだったと思うのだが、マンガのあとに科学記事が載っており、透明人間についてとか、アポロの月面着陸についてとかが紹介されていた。あの頃の私にとって、21世紀は科学の進んだ夢の未来だった。そして今私は、現実の21世紀を生きている。
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手塚治虫:1928年(昭和3年)11月3日 - 1989年(平成元年)2月9日
アトムに出てくるロボットの兄・コバルト、妹・ウランの名前を見ると、原子力が夢のエネルギーだと作者は思っていたのだろうと考えていたけども、亡くなるころには考えは変わっていたようだ。この本の「子どもの未来を奪うな」の章で手塚は、こんなことを書いている。
「核戦争が起きようが、食品汚染で苦しもうが、みんないっしょならいい」という人がいるけれど、とんでもないこと。みんないっしょになんか死ねない。いちばん小さいもの、胎児、赤ん坊、子どもから滅んでいくことになるのです。そんなことだけはしたくない。なんとしてでも、この世界を、この地球を、未来へとつないでいかなければならないと思います。
東日本大震災から2年。福島の原発事故は終息していない。MOX燃料を使っていた3号機が爆発している(★)。制御不能になった放射性物質が、大量に現在も福島第一原発から漏れ続けている。目には見えないけれど、東日本は風が吹けば飛散している放射性物質が舞うような状態であろう。先日日本を襲った煙霧の写真を見て、私は背筋が凍る思いがした。こんな未来が来るとは。食べ物だけでなく、呼吸の段階で防御が必要である。 →参考記事はこちら
科学が発達した夢の21世紀とは、一体何だったのだろう。こんなことが起こっているのに、未だに福島の汚染地帯に子どもが住んでいる。比較的汚染が低いといわれている会津を舞台にした大河ドラマが放送され、観光客が出掛けて行く。私も復興できるところはそうなってほしい。だけれど、もう大丈夫、という雰囲気に飲み込まれていて、子どもを守れなかったらどうするのだ。大人がしっかりしなければ、子どもの未来は守れない。
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