おおきな なみ
おおきな なみ―ブルックリン物語 | |
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久しぶりに図書館で絵本を借りた。何気なく表紙の印象だけで手にとった本なのに、帰ってきて娘に見せたら、喜んで読み出した。 翌日、ところでどうだった?と娘に『おおきな なみ』の感想を聞いてみると、「今まで読んだ本の中で一番のお金持ちが出てきてびっくりしたよ!」とのこと。なになに?
この本は、作者であるクーニーの一族の物語である。クーニーの祖父やその兄弟は、新天地アメリカにわたってきたドイツ系の移民で、材木商を営んでいた。ニューヨークと川をはさんだブルックリンの町に住んでいた。ハーティーが、この本の主人公だ。小さい頃から絵を描くことが好きだったハーティの夢はペインターになることだったが、それを話すと兄弟には笑われた。しかしハーティーの母の家系は、音楽家と画家ばかりだったらしい。母はピアノが好きで、子どもたちにピアノを教えるかたわら上流階級の暮らしを送っていた。ハーティーは裕福な両親と使用人との生活を送り大人になった。 画家だった祖父の描いた絵は、客間に飾られていた。豪華絢爛なその絵は「舟にのるクレオパトラ」というタイトルであり、来客たちは豪華な食事のあと、その絵とシタンのピアノのある客間で寛いだ。ハーティーの父は、あの絵の船は実際には浮かばないと言っていたので、ハーティーが実際の客船の絵を描くと誉めてくれた。ブルックリンにはホテルがないな、と言って、お父さんはブルックリンにホテルを作りました、というところで私と娘は驚いた。ハーティーの娘であるこの絵本の作者は、このホテルの最上階で育ったそうだ。
この本は、とにかく海の絵が美しい。黄色がかっている色調が優しく、ありきたりでない。少女時代夏のあいだを過ごした別荘で浜辺の散歩をしたとき、一つとして同じものがない波を見て、ハーティーは想像力を働かせて考えた。やがて大人になった彼女は本当に絵描きになった。「すばらしいえをかく」夢の道を歩き出した。そしてその後、クーニーの母となったのだった。 代々伝わる絵の才能以外に、自然をたっぷり味わえる環境にあったことや両親の理解が、クーニーの母の将来を決めた。それにしても一族の並外れた資産家ぶりは、大人の私が読んでも驚かされる。ここに描かれた豪華な暮らしにはため息をつくばかりで共感はできないが、ブルックリンの富裕層の記録という意味で、価値があるのだろう。
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