秋刀魚の味
数日前、職場でカボスの大きいのをいただいた。これは使うときに庭に出て、地面にボールみたいに打ち付けてくださいね、と言われた。そういう食べ方が正式なのか、と興味津々で持って帰ったが、まだ使い道が決まっていない。カボスといえば秋刀魚だが、もううちでは秋刀魚は食べない。もちろん私は、秋刀魚の味は忘れていない。どんなに美味しいかも知っている。秋の味覚であるキノコも、積極的にはもう食べない。重金属を集めやすいキノコは、汚染されている確率が大変高い。それなのに、テレビの料理番組ではキノコを使っている。テレビは罪な媒体だと思う。先日マグロでつくったツナ缶ですら、回収騒ぎがあったばかり。マグロの汚染が原因ではなかったか。魚の安全を、もう少し考えてから、自分が食べるか食べないかを決めたほうがいい時代だと私は思う。
細かいことを気にしていたら生きていけないと、それでもなんでも食べる人は食べるだろう。お世話になった人たちも、私たちはもう年だから気にしないのよ、と言っている。スーパーで売っているから安全だと信じている人もいる。でも違うと私は思う。みんながそうだから、みんながみんなが、と周りに合わせていたら、命がいくつあっても足りない世の中だ。 生活費を稼ぐために、自分の健康と引き換えに、作って獲って売る人がいる。仕方がないことかも知れない。私は東日本大震災で被害を受けた地方の人で、生活を元通りにしたくて暮らしている人を批判しているのではない。
朝の連続テレビ小説で、悲惨すぎることは隠して、明るい楽しい夢だけを追いかけたドラマが話題になる。でもそれは、それだけ現状が厳しいことの裏返しだろうと思う。復興は大事だが、復興に値する大地なのか、海なのか、山なのか。その見極めは本当に大切なはずなのだが。見ざる、言わざる、聞かざるの三猿がいる日光が、大変汚染されているにもかかわらず、その土地は修学旅行の小学生で今日もまた溢れかえり、枯葉は集められ神社で焼かれる。放射能はばらまかれ、人々の肺に吸い込まれる。日光杉で作られた高級な線香は、どこかの仏壇で今日もしっかり燃やされる。
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目黒のさんまは江戸の落語、小津安二郎の映画も過去のもの。庶民に愛された秋刀魚の味は、もはや私には幻となった。日本が愚かな発展を遂げた結果、こんな時代が来てしまった。豊かさの追求のために、弱い人たちに我慢を押し付け、結果弱い人も強い人も同じ汚染された環境で暮らすことになった。罪を背負った私たちは、この時代をどう生きて次の世代に繋げるかが、本当は今問われているのである。さて、ニッポン無責任男や女があふれかえる日本は、7年後までこの綱渡りを続けているのだろうか。
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