卵焼き
おとといぐらいから、母が昔弁当に毎日入れてくれていた卵焼きを、食べたくてたまらなくなっている。卵焼きといっても、うちの場合は出汁巻き卵である。
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私が中学と高校のころ学校に持たせてくれていたのは、黄色い卵焼きと肉などタンパク質の茶色いおかずとキュウリかホウレンソウ等の緑野菜、それに海苔に醤油をかけたのが挟んである白いごはんの弁当だった。プチトマトが入っているでもなし、果物が入っているでもなし。見た目はよくないし、気の利いた工夫が何もないその弁当が、私は嫌でたまらなかったし、とにかく毎回入っている卵焼きを美味しいと思ったことなど一度もないの。なのにふと、あの卵焼きが懐かしくてたまらなくなっているから不思議である。
そんなわけで今日の夕刻横浜の実家に電話を入れたら、あちらから人恋しそうな母の声が聞こえてきた。「私よ私。ねぇねぇ、あの卵焼きが食べたくなっちゃって仕方ないのよ。こないだ九州に来てくれた時に作ってもらえばよかったんだけど、もう帰っちゃったから、次の機会に絶対作ってもらいたいんだけど、次はいつ来てくれるの?」と話しかけると、母が笑って、「そんなこと言ってもこの頃うまくいかなくなっちゃったのよ。」と答えた。そうか、この頃母は料理をほとんどしていないのだったな。
母は最近会う人ごとに、熊本での2週間がどんなに楽しかったかを聞かせているらしい。天草の魚が美味しかったこと、孫が元気にしていたこと、居酒屋に連れていってもらったら楽しく酔っ払った同じ年頃の女性がカウンターにいて、その様子を見ているだけで幸せだったことなど。
まだ母に甘えたい気持ちがある自分のことを、大分情けないと思うけれど、母の味を懐かしむことは悪いことではないと思う。さて私の子どもたちがやがて大人になったときに、私のどの料理を懐かしく思いだしてくれるだろう。私は自分の母と違って気が多いので、あれこれ作ってはみるけれど、これなら絶対誰にも負けないわ!という得意料理があるわけではないから。さてさて。そういえば来年から、娘の弁当作りが始まるな。私も母に負けないような、卵焼きを作れるようになっていたいな。
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