会者定離
最近心に残った言葉は「会者定離」。これは現在熊本県立美術館にて開催中の「浜田知明のすべて」展の、第三室で見られる彫刻のタイトルである。
この作品では、老齢の男女が背中合わせで立っている。その二人の手は、指でだけ繋がっている。私の好きな銅版画の「月夜」や彫刻の「二人」の男女は、静かに寄り添い抱き合っているのに。
人間は共に生きていくパートナーがあったとしても、やがては離れていく運命を生きている。けれど未練は残る。心が痛む。男女の繋がれた手がそんなことを表現しているのだと思うと、浜田知明が人間を見る目の深さと高い表現力に、ただただ唸るしかない。
思い通りにならないことの方が多かりし人生。「会者定離」という真理を心得ていても、なお割りきることのできない心の繋がりについて、色々と思いをめぐらす夜。月は静かに天頂に浮かんでいる。
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