秋分の日
秋分の日。ようやく7月はじめに大水害で町が壊滅的な被害を受けた人吉に行く機会があった。無農薬農家の米の収穫の手伝いボランティアである。私はこの方面に数年前出かけたとき、道幅の狭い高速道路のトンネル内でパニック障害になり、恐ろしくてそれ以来自ら運転することは避けてきた。今回はあるNPOの借り上げたマイクロバスでのボランティアと聞いて、安心して参加できた。人吉につく前に、山江でひとやすみ。今が旬の栗スウィーツが売っていたので、迷ったあげく栗団子を250円で買った。いきなりだんごが上等になったような味で満足だった。
人吉でバスが高速から降りた。目に入ってくるのは、豪雨で破壊された町。被害があった場所となかった場所の落差が凄い。青井阿蘇神社の赤い橋はニュースで見たときと同じように壊れたままなのに、その池には元気な蓮が茂っていた。店によっては、仮営業という張り紙をだして営業しているところもある。元の場所ではまだ営業できないのだろうか。仮設住宅から仮にしつらえた店に通っているのだろうか。
目的地は町の中心部から離れた、支援が行き届いていないというO地区。家はほとんどやられてしまったのに奇跡的に残ったという田んぼ。作業小屋に荷物を置かせてもらって、10人で隊列を組んでまずは収穫前の田んぼのゴミ拾い。それから機械で稲刈り。自動的に麻ひもで稲わらが束ねられていく。それを先週切り出したという竹竿を組んで作った棚に掛けてゆく。これが人手が要る作業である。10人いればあっという間である。大変喜ばれた。昼食は手作り弁当が出され、近所の方からも果物や天ぷらが差し入れされる。大変ありがたい。休憩中は自衛隊出身の農家の方のおしゃべりに花が咲く。本当に人の使い方がうまい。自衛隊にいた人は総じて能力が高いと感心する。
薄曇りの一日。彼岸花がたぶん昨年と同じ場所に咲いている。思いがけない災害のあとでも、稲刈りをすればトンボが飛び交い天空では鳶が鳴く。大きな自然の営みの中に暮らす人間たち。再び立ち上がることができるのは残念ながら全員ではないだろう。けれども立ち直り、先祖が守ってきた田んぼで農業を営む人が、少しでも残ってくれるといいと思った。
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