2020/09/27

秋分の日

秋分の日。ようやく7月はじめに大水害で町が壊滅的な被害を受けた人吉に行く機会があった。無農薬農家の米の収穫の手伝いボランティアである。私はこの方面に数年前出かけたとき、道幅の狭い高速道路のトンネル内でパニック障害になり、恐ろしくてそれ以来自ら運転することは避けてきた。今回はあるNPOの借り上げたマイクロバスでのボランティアと聞いて、安心して参加できた。人吉につく前に、山江でひとやすみ。今が旬の栗スウィーツが売っていたので、迷ったあげく栗団子を250円で買った。いきなりだんごが上等になったような味で満足だった。

人吉でバスが高速から降りた。目に入ってくるのは、豪雨で破壊された町。被害があった場所となかった場所の落差が凄い。青井阿蘇神社の赤い橋はニュースで見たときと同じように壊れたままなのに、その池には元気な蓮が茂っていた。店によっては、仮営業という張り紙をだして営業しているところもある。元の場所ではまだ営業できないのだろうか。仮設住宅から仮にしつらえた店に通っているのだろうか。

目的地は町の中心部から離れた、支援が行き届いていないというO地区。家はほとんどやられてしまったのに奇跡的に残ったという田んぼ。作業小屋に荷物を置かせてもらって、10人で隊列を組んでまずは収穫前の田んぼのゴミ拾い。それから機械で稲刈り。自動的に麻ひもで稲わらが束ねられていく。それを先週切り出したという竹竿を組んで作った棚に掛けてゆく。これが人手が要る作業である。10人いればあっという間である。大変喜ばれた。昼食は手作り弁当が出され、近所の方からも果物や天ぷらが差し入れされる。大変ありがたい。休憩中は自衛隊出身の農家の方のおしゃべりに花が咲く。本当に人の使い方がうまい。自衛隊にいた人は総じて能力が高いと感心する。

薄曇りの一日。彼岸花がたぶん昨年と同じ場所に咲いている。思いがけない災害のあとでも、稲刈りをすればトンボが飛び交い天空では鳶が鳴く。大きな自然の営みの中に暮らす人間たち。再び立ち上がることができるのは残念ながら全員ではないだろう。けれども立ち直り、先祖が守ってきた田んぼで農業を営む人が、少しでも残ってくれるといいと思った。

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2016/06/08

2016年3月 岩手へ

今年の3月に、友人を訪ねて岩手県に行きました。盛岡観光ガイド→☆

岩手県では今年国体があるそうで、あちこちでわんこそばのキャラクタ―がついたポスターを見かけました(→☆ )。でも私は同じ名物でもわんこそばではなく、じゃじゃ麺に挑戦。白龍(バイロン)のカワトク分店にお邪魔しました。美味しくて楽しかったです。平民宰相・原敬生家近くにある鉈屋町に泊まったのもいい思い出。 →盛岡町屋体験宿泊  

翌日は小雪が舞い寒い寒い朝でした。熊本では桜が咲いているのに、東北はまだまだ春は遠いと思いました。私は車に乗せてもらい、盛岡から遠野を通り釜石へ。時は春の選抜野球大会。21世紀枠で出場した釜石高校の応援で、町は盛り上がっているようでした。町は東日本大震災から5年で、随分元気を取り戻したように見えましたが、私たちはさらに進んで大槌町()へ。

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大槌町は、浜辺から見えるところに蓬莱島というひょうたん形の島がある、三陸の小さな町でした。ここはあの東日本大震災の大津波によって、町が根こそぎ破壊されてしまいました。あれから5年。これが今の大槌町の写真です。墓地がある丘から全景を写しました。中央に多くの行方不明者を出した役場が、そのままの姿で建っているのをみとめられます。山の方の仮設住宅には、今なお多くの方がお住まいだと聞きました。盛岡から沿岸部へゆく道も整備され、国体のための工事が盛んな岩手県ではありますが、暮らしが元通りにならない人たち取り残されたようになっていることに、私は少なからず衝撃を受けました。~案内してくださった方のあの日の記憶を、途中休憩した遠野の風の丘で伺いました。誰にでも一人一人のかけがえのないストーリー(物語)があるということを、しきりにおっしゃっていました。~津波に飲まれた人もそうでなかった人も大きな傷を負い、それを抱えたまま暮らしている現実は辛すぎます。この土地で幽霊の話がよく聞かれるというのも、うなずけます。

歴史をひもとけば、これまで何度も津波が襲った町に、いくら土地をかさ上げするとはいえまた同じ町を建設することの是非が、検討されなければならないでしょう。震災を機に人々の心を押しつぶした瓦礫は、今はもうありません。あの瓦礫広域処理騒ぎはなんだったのでしょう。九州で聞いた話と、東日本大震災の被災地で感じたことには、随分隔たりがあると私は思いました。

駆け足の旅でしたが、最後は光原社を案内していただき満足しました。光原社といえば宮沢賢治。この絵本、私はそういえば持っています。

注文の多い料理店 (日本の童話名作選)
注文の多い料理店 (日本の童話名作選) 宮沢 賢治

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盛岡や遠野は、若い頃から一度は訪れてみたい場所でした。今回はそれらのほかに友人のはからいで、遠い大槌まで足を延ばすことができ、現地で被災者支援をしている方々とも知り合うことができました。たった一泊でしたが、忘れることのできない旅になりました。というのはこのあと4月に、私は思いかけず熊本地震を経験することになったからです。

3.11岩手・大津波の記録 〜2011東日本大震災〜 (

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3.11岩手・大津波の記録 〜2011東日本大震災〜 (<DVD>) IBC岩手放送

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2016/02/24

水色の物語

「水曜日に開封してください」と私のもとに届いた手紙。差出人は、熊本は赤崎水曜日郵便局。水曜日まで待って開けてみると、そこには若い女の子の物語がつづられていた。

話は私がとある日曜日に、熊本の芦北にある つなぎ美術館 を訪ねたところにさかのぼる。あの日私は、高速を飛ばして津奈木町まで出かけ、美術館にあったポストに手紙を投函したのだった。水色にキラキラ光る海のある小さな町を見下ろす丘にケーブルカーでのぼり、ひととき思いをはせた。その思いを綴った手紙は、どこの誰にとどいたのだろう。興味が広がる。なんて素敵なプロジェクトだろう。

このプロジェクトは「赤崎水曜日郵便局」 という。海に浮かぶ赤崎水曜日郵便局に自身の水曜日の物語を送ると、知らない誰かの水曜日の物語が送られてくるというちょっと不思議なアートプロジェクトです(この紹介文は、『赤崎水曜日郵便局』の公式ブログより)。

赤崎水曜日郵便局
赤崎水曜日郵便局 楠本智郎 つなぎ美術館

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私は、慰めのハートもそうだけれど、こういう物語が好きである。誰かの気持ちが誰かに届く、誰かの物語が違う誰かに届く。こういう繋がりによって、人が慰められたり元気が出たりする。そういうことが、なんだかいいなぁと思うのである。

 

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2014/03/11

くまもとぐらし

くまもとぐらしになって、早2年がたとうとしています。引っ越すにあたり家族や友人たちには大変な心配をかけました。こちらに来てからは、土地の方々に大変親切にしていただきました。

これから熊本に来たい方や、今こちらに来て困っていることがある人、同じような思いの人と繋がりたい方に役立つような情報ページがあるといいと思い、仲間と協力して月末にスタートできそうな所にこぎつけている計画をご紹介します。

くまもとぐらし

Photo

誰かと誰かが繋がるきっかけになることを願いながら。2014年3月11日に思うことでした。

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2013/09/12

♪夢の途中

2020年に開かれる夏季オリンピックの開催地が東京だと決まった朝、私は6時に目が覚めた。すぐにニュースを確認してそのことを知った時、これが夢の途中だったらいいのにと思った。もう一度眠ってから目覚めたら、別の都市での開催が決まっていたらいいのにと。

東日本大震災から2年半。いまだに故郷に帰れない人々、故郷にありながら不安に過ごす人々、健康被害を防ぐため遠くに移住した人々、色々な苦難がある日本に7年後はあるのか。7年後、私は自分が生きていることすら想像できないのに、テレビでは五輪開催関連のニュースが飛び交う。この状況を悪い夢のように思っているのは、私だけではないと信じたい。

私は子どもを思う母親の気持ちを考える。想像を絶する規模の地震が起こり、懸念されていた原発事故が起こった。その被害は津波による甚大なものだけでない。津波だけでもどれだけの命と暮らしが奪われたか、立ち直るには大きすぎる被害なのに、目に見えない放射能が何処まで飛散したか、その値が正確に示されていない。空間線量だけでは分からない。土壌の検査をし、検出された核種がどんなものなのか、その値が意味するところはどういうことなのかを、多くの国民は知らない。

多くの人々の混乱と苦しみを覆い隠すような五輪のニュースに、私は目と耳をふさぐ。同じ国のことなのに、復興を利用した金儲けが繰り広げられようとしている。福島からたった250キロの東京は、福島を切り捨てた。私はそう感じた。これから言いたいことも言えない時代がやってくる。ぼやっとしていたら、命がいくつあっても足りない時代になったのだ。

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2013/04/10

♪ひとりよりふたり

今日の昼下がり、私はNPOの集まりに誘われていた。前の用事が終わってからそれまで間があったので、風に吹かれながら会場近くの喫茶店に立ち寄った。そこは小さいけれど落ち着いたお洒落な空間で、とても美味しい珈琲が飲める。しかも良心的なお値段。心の友が行きつけの店なのと、昨年暮れに紹介してくれた。

店には自然が好きなこだわり店主と、可愛い犬がいる。私は今日はその犬を撫でてとても癒された。先客の70位の男性が、マスターが庭に出ている間犬の可愛がり方を教えてくれた。その人はカメラが趣味で、散歩の途中にいつも珈琲を飲みに来るようだ。プリンセスのようなその犬は、撫でられると気持ちよさそうにひっくり返る。そのあとは私の手をぺろぺろ舐めて動かないので、しばらくずっとしたいようにさせていた。そういうことは久しぶりだった。忘れていた平和な気持ちが甦った。

やがて犬が新しく入ってきた客のところに行ったので、私はカウンターに座り直し、カプチーノを飲みながら壁際の小さな本棚から一冊を手にとってみた。水上勉の本だった。短編ばかりで読みやすそうだし、表紙が春らしい桜の絵だったので気に入った。古本につき100円とのこと。私は何か縁を感じて買うことにした。

醍醐の桜 (新潮文庫)
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カウンターに戻ってきたマスターと水上勉について話したり、奥の庭で丁度アウトドア料理の撮影をしていたので見学させてもらったり、店に寄ったことで色々な出会いがあり私は嬉しかった。3時に店のそばで開かれた一人住まいの人々の集まりでも感じたことだが、人間はひとりは寂しいものなのだ。たとえひとり暮らしでも、決まった日に顔を合わせて安否を確認しあえる仲間だったり、ペットであっても心の繋がりを感じられる存在がいるといないとでは、人生の意味が変わる。人はそういう風にできている。多分そういう風に作られたのだ。   

   ♪ひとりよりふたり

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2012/12/18

贈り物

贈り物にするといいと思う本を推薦して、と頼まれて私が思いついたのはこの2冊。

【一生懸命働いているお母さんに感謝をこめて】

かあさんのいす (あかねせかいの本 (8))
かあさんのいす (あかねせかいの本 (8)) ベラ B.ウィリアムズ

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【ジュニアでも大人でも大切な人に。こころを言葉にして伝えたいとき。】

詩のこころを読む (岩波ジュニア新書)
詩のこころを読む (岩波ジュニア新書) 茨木 のり子

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贈り物っていいな。間もなくクリスマス。私のところに懐かしい人からカードが次々届いて嬉しい。心を形にするのって大事なのね。

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今朝は東北から九州に避難してきた知り合いから電話があり、小一時間語り合った。故郷にとどまった人、子どものことを考えて避難した人。不安、罪悪感、さまざまな軋轢の中で、クリスマスの前でも疲れている。アイリーン・スミスさんの言葉が頭をよぎる。 →福島と水俣に共通する10の手口(必見)

彼女は、自分にできることや頼まれたことはちゃんとこなしている。例えば、募金を集めてミカン故郷に送っている。思いは複雑だけど一生懸命。私はそのミカンを見て、自分もミカンを送る先を考えた。私も明日送ろう。お世話になった方々に熊本のミカンを。

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2012/10/11

ハートフル・キッチン

今日は仕事はオフ。私はこちらで知り合った若いママとお薦めの店で待ち合わせ。ハートフル・キッチンは、心と体に良さそうな居心地の良いレストラン。

お料理は優しい味、しかも生き届いたおもてなし。新しい友人は品があって聡明で美しくて、ご一緒させていただくのが悪いような女性。瞳の奥に静かな湖をたたえているような人なんだなぁ。そう伝えたら、誉め過ぎと言われたけど、ハイ確かに私は人の長所を見つけるのがうまいけど、本当のことなんだもの。というわけで会話が弾み、楽しいひとときだった。この一年ぐらいの間に熊本に越してきたばかりだというのに、地盤を固めて新しいことにチャレンジし始めている彼女。小さなお子さんと二人で避難してきて大変だろうに、偉いなと思う。だけどこういう方が見回すととても多い。今日二人で話していて意見が合ったのは、これまでの人生の全てのことが繋がって、今の力になってるような気がするということ。

ふと見ると、向こうのテーブルにお子さんと腰かけているのも最近お知り合いになったばかりのママ。アマゾナイトを言い当ててくださった方では?声を掛けると、やはり私のお向かいの彼女のお仲間だ。私たちは偶然に驚いて、何かが呼び寄せてるのかも?と微笑み合った。

皆身体に良いものが好きな人たち。子どもの幸せを願う人たち。避難してきた理由のひとつが、東北の仲間との繋がりにあるところも同じ。そういうことを共有できると、本当に不思議な見えない力でこの場所に集められたような感じだ。得意なことを活かして、これから各々の総合力を高めあい、今ここだからできることをしていきたいねと話し合った昼下がり。今日は3.11から1年と7ヶ月目。

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懐かしいハートたちを思い出しました。

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2011/12/16

幸せの黄色いハナタチ

年末が近づいてきた。やらねばならないことが山ほどあるのに、なかなかはかどらないのは毎年のこと。…今年は冬に娘と旅に出るので、いただく方には申し訳ないけど、クリスマスカードや年賀状は最小限にし、年が明けてからまとめてと考えている。旅行中留守番する家族のために、家の中・冷蔵庫の中を整えることが一番大切かと、あれこれ考えて動いている。

実は私の心の中は、どうにもならない複雑なことが渦巻いているけど、一見いつもと変わらぬ年の瀬を迎えている。そんな一方で、被災地には寒い冬がもうやってきていて、大変な現状は簡単には変わらないようである。今日もそんな情報を見かけた(→こちら)。現地の方々に心を寄せて、何かできることはないかと、忙しいながら今日も思う。

そういえば、岩手県の大槌町にボランティアに行った方から、町の復興を願い、菜の花の種を川沿いに植えた人達がいたことを聞いた。私は、黄色は希望をイメージする明るい色だから、現地の方々の目には、さぞかし美しく菜の花が映ったことだろうと思った。また、向日葵も被災した各地で植えられたようで、今年咲いた花からとれた種をいただいたので、今度は自宅で育てて協力していただける方があったら、私からお渡ししたいと思う。今年あったことを忘れないために。

たった今宅配便が届いた。親友の向日葵みたいなお日様ちゃんから、私の子どもたちへのクリスマスのプレゼント。有り難い。私はそういえば、自分の子どもたちのためのクリスマスプレゼントの用意を、全くしてなかった。クリスマスまでもう10日もないので、急がなくてはいけない。

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若者のボランティア体験記から生まれた本を、最後に紹介しておこう。

いつか、菜の花畑で ~東日本大震災をわすれない~
いつか、菜の花畑で ~東日本大震災をわすれない~ みすこそ

扶桑社 2011-09-09
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2011/11/24

被災地の今

私は何を寝ぼけたことを昨日はつぶやいたのでしょう。

昨夕知り合いから紹介された「被災地の今」の記事を読んで、無知を恥じました。こんなことになっていたとは。

     被災地の今(←ここをクリック)

寒い冬、凍死する方がないようにと思います。政府からは、被災地でも失業保険の打ち切りだとか、それから今後の年金がどうしたとか、お花畑にお住まいのような大臣から発言があったそうですが、この現状をご存知なのでしょうか。

かくいう自分も、現地にまだ足を運べないまま冬を迎えてしまいました。できることがあったら、私も協力したいと思います。

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